アメリカ系スーツを語るときは、ヨーロッパの植民地だった時代までさかのぼり、たくさんのヨーロッパの移民がアメリカにやってきたことを念頭にあります。
多くの国の人たちが、多くの服とともにアメリカの地を踏み、それがアメリカのスーツをつくりあげました。
英国、スエーデン、オランダ、フィンランド、スペイン、フランス人たちが、アメリカを訪れ定住します。
中でも英国人はヴァージニア、マサチューセッツ、ニューヨークなどの主要地に多数定住し、スーツのスタイルは英国スーツがルーツとなりました。
ただ、移民で構成されたアメリカ人には、もともと自由な気風が、強かったため、フロック・コートを始めとする英国スタイル(タイトなシルエット)の窮屈さを嫌い1860年代には、すでに動きやすさと、機能性を追及した「サックコート(スーツ)」を考案しました。
サックとは文字通り「大きな袋」のようなスーツです。これが後に、アメリカで最も古い洋服屋「ブルックスブラザーズ」は、このサックスーツを着やすいものに改良し、1915年に現在のアメリカン・トラディショナル・モデルの原型が完成しアメリカンスーツに定着いたしました。
(アメリカントラデッショナルスーツは前のにダーツが入らず、胴回りがゆったりとして肩幅もゆったり目なスーツです。)
サックコート(アメトラ)が、ほぼ1世紀にわたり、アメリカ人に愛用されたのは、機能性の高さがアメリカ人気質にピッタリだったことと、英国スーツのように自分の体にあわせてオーダーでスーツを作るのでは無く、どんな体型でもカバーしてくれる、ゆとりのあるスタイルだったこと、それにより既製服として大量につくられたことの3つの理由になります。
その後、「アメリカン・コンチネンタル」などの名称でラテン系スーツ(タイト目なスーツ)を意識したスタイルが誕生しましたが、あまり定着せず、どんなスタイルの既製服でも、体にフィットせず、ゆったりとした窮屈では無い自由に動きやすいスーツがアメリカ人には、好まれ、現在のアメリカントラデッショナルスーツが定着しました。
簡単に言うと、英国スーツはウエストを絞りますが、アメリカスーツはウエストを絞らないシルエットになります。
自由な国アメリカは、スーツでさえ窮屈なものは、好まないようです。今の流行は、英国・イタリアのタイットなシルエットが流行ですが、アメリカントラッドにも伝統と歴史が受け継がれて多く人々に好まれています。
スーツにも各国の歴史・気質・信念が強く感じれます。
サミットなどで、各国の要人が着用しているスーツは、その国の文化と気質を重んじた、スーツを着用しているのでぜひ良く目を凝らし見てください。