オーダースーツの裏地の選び方・おしゃれな組み合わせ例を紹介

スーツの着こなし

2022.4.7

スーツの裏地は、ふだんは見えない部分なので、あまり気にしたことがないという方もいるかもしれません。しかし、裏地はスーツの機能性やデザイン性に関わる重要な部分です。オーダースーツを注文する前に裏地について知っておくと、より自分のこだわりが詰まったスーツを作ることができます。

今回は、裏地の役割や種類、素材、裏地選びのポイントなどについてご紹介します。スーツの色と裏地の組み合わせ例も載せているので、ぜひご参考にしてみてください。

オーダースーツの裏地の役割について

オーダースーツの裏地の役割について、ご紹介します。

スーツが着用しやすくなる

スーツの裏地があることで、ジャケットとシャツの間に摩擦が起こりにくくなります。裏地によって羽織る際の滑りを良くし、袖や背中の引っ掛かりを少なくすることで着脱しやすくしているのです。

スーツの汚れや変色を防ぐ

裏地は吸湿性や放湿性に優れており、素材によっては静電気も予防できます。

スーツの内側は湿気がこもりやすいため、ムレにより繊維が傷んだり、汚れや変色が起きたりします。しかし、裏地があることで湿気によるムレを防止し、スーツへの負担を軽減することが可能です。通気性の高い素材を組み合わせれば、より高い効果を得られます。

表地を保護・補強してシルエットを保つ

裏地は、表地の補強と保護の役割を果たします。摩擦によるダメージが少なくなることで生地本来の美しさやドレープなどが保たれて、型崩れを予防することが可能です。

また、裏地による滑りが着用したときのフィット感を高め、かつ裏地が肩パッドなどの付属品を隠してズレや体に直接あたるのを防ぐことでスーツを着たときのシルエットが美しくなります。

さらに、裏地がないとスーツはペラペラで安っぽい印象になりますが、裏地があることで厚みと重さが増し、スーツの見た目の印象がグッと良くなります。

ジャケット生地の透け防止

生地の種類にもよりますが、裏地はジャケットからシャツが透けて見えるのを防ぐ役割も果たします。仮に裏地がなかった場合、ジャケットとシャツが直接こすれてしまうため、生地は傷み、薄くなります。場合によっては後ろのシャツが透けて見えてしまうため、裏地は必要です。

ファッション性を高める

裏地にはファッション性を高める役割もあります。例えば、裏地はあまり見えない部分ですが、裏地の色や柄にこだわれば、スーツの中が見えたときにおしゃれな人という印象を与えられます。オーダースーツなら好きな色や柄の裏地をつけられるため、自分のこだわりを表現できるでしょう。

スーツの裏地の種類と特徴

スーツの裏地には「総裏」「背抜き」「半裏」の3つの種類があります。季節によって使い分ければ快適さが高まるため、オーダースーツを仕立てるときにはご参考にしてみてください。

総裏

総裏は、ジャケットの内側の全面に裏地がついた仕様のものです。保温性や保湿性に優れており、丈夫で型崩れしにくいという特徴があるため、摩擦や汗などによる傷みを軽減できます。高級生地を使う場合、総裏にすると長持ちさせることが可能です。

一方で、全面に裏地がついているため真夏は暑くなり、またムレやすくなります。冬用のスーツや、オールシーズン(通年用)のオーダースーツにおすすめです。

背抜き

背抜きとは、背中から裾にかけて裏地がない仕様のものです。裏地がない分通気性が良くなり、総裏よりも軽くて涼しいという特徴があります。

一方で、総裏よりも表地が傷みやすく型崩れしやすいです。また、薄い生地で仕立てるとシャツが透けるため、気になる方は注意しましょう。春・夏用のオーダースーツにおすすめです。

半裏

半裏とは、背中と脇の下から裾までの部分に裏地がない仕様のものです。背抜きよりも裏地の面積が少ないため、より通気性が良く軽量です。

一方で、総裏や背抜きよりも型崩れしやすく、とくにベント(裾の切れ込み部分)にしわができやすいという特徴があります。こうしたデメリットが気になるという方は、事前に店員などに相談してみてください。夏・真夏用のオーダースーツにおすすめです。

スーツの裏地に使われている素材

スーツの裏地に使われている素材は、大きく分けて以下の3種類です。

合成繊維

ポリエステルなどの合成繊維は、多くのスーツの裏地に使用されています。耐久性に優れており、メンテナンスの必要はほとんどありません。ただし通気性や吸湿性に劣るため、汗を吸いにくくベタつきが気になることも。静電気などが起こりやすいため、冬は注意が必要です。

天然繊維

高級素材にあたるのが、シルクなどの天然繊維です。デリケートなので耐久性が低いですが、肌触りが良く、高級感があります。また、静電気が起こりにくく、吸湿性に優れているため、湿度の高い夏や梅雨時期でも快適です。

再生繊維

天然繊維を加工したものを再生繊維といい、代表的なものがレーヨンとキュプラです。合成繊維と天然繊維の良さを兼ね備えていることから、耐久性や吸湿性、放湿性に優れています。また肌触りが良く、静電気も起きにくいです。この他、光沢があり、薄くて軽いという魅力もあります。

スーツの裏地は織り方にも違いがある

スーツの裏地は、織り方によっても違いがあります。

平織

平織(ひらおり)とは、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を1本ずつ交互に織る手法です。丈夫で摩擦に強く、プリントや加工がしやすいという特徴があります。

綾織

綾織(あやおり)とは、2本または3本の経糸と、1本の緯糸をずらしながら織る手法です。伸縮性に優れており、シワやヨレになりにくいという特徴があります。厚みがあり、また滑りが良いため、スーツ以外の羽織りの裏地にも使用されています。

朱子織

朱子織(しゅすおり)は、経糸と緯糸を5本以上組み合わせて交互に織る手法です。光沢感があり、肌触りは滑らかです。密度が高く厚みがあるため、冬用のスーツや羽織りなどに使用されます。近年は、透け防止にも役立つことから人気が高まっています。

ジャカード織り

ジャカード織りとは、ジャカード織機で織る手法です。デザインそのものを生地に織り込むため、自然な立体感が出て、高級感のある仕上がりになります。

甲州織

甲州織(こうしゅうおり)は、古くから甲斐絹(かいき)の産地として知られる山梨県で織られた生地。主に、富士吉田市を中心とした郡内地方で生産されています。先染めの糸で織るため、複雑で繊細な柄や文様ができます。立体感があって軽いのも特徴です。

スーツの裏地の色や柄を組み合わせる際のポイント

オーダースーツの裏地を選ぶ際は、以下のポイントに留意しましょう。

表の生地と色が近いものを選ぶ

裏地の色に迷ったときは、表の生地と色が近いものを選びましょう。例えば、ネイビーのスーツならネイビーまたはブルー系の裏地というように、同じ色や近い色を選ぶとまとまりが出ます。色のトーンを変えると違った印象になるため、裏地の色に迷ったら試してみてください。

裏地と表の生地で柄が違うものを選ぶ

表の生地と同じ色にして、柄を変えるという方法もあります。例えば、表の生地がダークグレーのストライプなら、裏地はグレー系統の無地にするなどです。同じ色でも柄を変えると印象が変わるため、控えめに、でもおしゃれに仕上げたいという方にもおすすめです。

オーダースーツならではの派手でおしゃれなデザインに挑戦

あえて派手な裏地を選ぶのも、おしゃれです。例えば、ジャケットを脱いだとき、ちらりと鮮やかでおしゃれな裏地が見えれば、インパクトがあります。

季節に合わせた色を選ぶことも大切

季節に合わせた色を選んでみるのも良いでしょう。例えば、春はピンクなどの淡い色合い、夏には爽やかなブルー系、秋はクラシカルなタンカラー(淡いブラウン)やトープ(灰色がかったブラウン)、冬は重めのダークカラー(オリーブ、ブラウン、グレー)などがおすすめです。

オーダースーツの裏地でおすすめの組み合わせ例

上記のポイントを押さえても裏地選びに迷ったときは、以下の組み合わせ例をご参考にしてみてくだ さい。

ただし、色の印象は明度や彩度によって大きく変わります。そのため、色見本で確認したり色のトーンを合わせたりしながら、組み合わせる色を選びましょう。

スーツの生地スーツの裏地特徴
ブラックレッドシックなブラックスーツとレッドの裏地の組み合わせ。華やかで大人っぽい印象に仕上がります。
ネイビーブルーネイビーのスーツは、ブルーの裏地と相性抜群。無地でも柄でもすてきに仕上がります。
ネイビーオレンジネイビーのスーツにオレンジの裏地を合わせると、ネイビーの知的で硬質なイメージがやわらかくなり、カジュアルになります。
ネイビーグレーネイビーのスーツにシックなグレーを合わせると、上品で小洒落た印象に。シンプルな柄にするとさりげない大人のおしゃれを演出できます。
チェックブラックデザイン性が高く、洒落っ気の強いチェック柄のスーツには、メリハリが出るシックな色の裏地がマッチします。ブラックやボルドーなど暗めの無地を選びましょう。
グレーピンクチャコール含むグレーのスーツには、淡いピンクが合います。落ち着いたグレーにピンクが合わさると、知的でスタイリッシュに。おしゃれでセンスの良い印象を与えられます。
グレーブラウン茶色がかったグレーのスーツには、ブラウン系の裏地がぴったりです。自然になじむのに、ちらりと見えたときのインパクトもあります。シンプルな柄ものをチョイスするのもおすすめです。
チャコールグレーボルドーチャコールグレーにはボルドーのように色気のある色が合います。重厚感があり、大人っぽく仕上がります。シンプルな柄にしても良いでしょう。
キャメルボルドーキャメルのスーツには、秋を連想させるボルドーがおすすめ。派手になりすぎず、でも遊び心を感じられる組み合わせです。
ブラウンダーク系ブラウンのスーツには、ダーク系の裏地が合います。例えば、ダークグリーンやオリーブなど、グリーン系との組み合わせは自然です。チェック柄にしてみるなど、個性をプラスしてみてください。

目立たない裏地にこそ大人の遊び心を

裏地は、スーツの機能性やデザイン性を高める重要な部分。スーツを選ぶとき、つい外側だけに意識が向きがちですが、目立たないからこそ裏地にこだわりましょう。オーダースーツを作る際は、表の生地だけでなく、裏地にも注目してみてください。

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西林 和之
Writer
西林 和之
株式会社花菱
2015年HANABISHIに入社。経営企画部を経て、現在はマーケティンググループ長として、販売の企画、コンテンツマーケティング等を担当。
2015年HANABISHIに入社。経営企画部を経て、現在はマーケティンググループ長として、販売の企画、コンテンツマーケティング等を担当。
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