既製品よりも安い?オーダースーツの相場と予算決めのポイント

その他(豆知識)

2023.1.30

ビジネスパーソンにとってスーツはいわば戦闘服。ピシッとした装いは自信にあふれ、見る人に堂々とした印象を与えます。ここで重要なのは、“自分の体型に合ったスーツを着る”ということ。肩の位置がズレたり、袖の長さが合っていなかったりすると、たちまちスーツの魅力は失われ、自身の信頼も揺らいでしまうでしょう。

もしもあなたが「既製品のスーツが体型に合わない」とお悩みなら、ぜひオーダースーツを選択してみてください。 今回は、オーダースーツの種類や価格相場、オプション、予算を決めるポイントなどについてご紹介します。ビジネス用や冠婚葬祭用にスーツを新調しようとしている方は、ぜひご覧ください。

既製品よりオーダースーツを作るほうが安い?!

オーダースーツと聞くと、多くの方は「価格が分かりづらく、高い」という印象を抱くのではないでしょうか。もちろん高価なオーダースーツもありますが、オーダーの種類によって値段は変わりますし、選ぶテーラーによっては既製品と値段が変わらないこともあります。また生地の素材にも考慮すれば、既製品よりもリーズナブルにオーダースーツを依頼できることもあります。

さらに、オーダースーツは自分の体に合わせて作るため、摩擦などの生地への負担が少なく、毛羽立ちや伸び、色落ちなどの心配がないため長持ちしやすいです。もしも生地が傷んだり体型の変化によってサイズが合わなくなったりしても、ダメになったら買い替えなければならない既製品とは違い、テーラーのアフターフォローによって長く着用できます。

オーダースーツの種類と価格の相場

オーダースーツの仕立て方には、「パターンオーダー」「イージーオーダー」「フルオーダー」の3つの種類があります。それぞれの特徴や価格相場については、以下のとおりです。

パターンオーダー

パターンオーダーは、“ゲージ”と呼ばれるサンプルを試着して自分のサイズを探し、そこから着丈や袖丈などを調整する仕立て方法です。既製のサイズやシルエットをベースに作るため、標準体型の方におすすめで、オーダースーツの中でも値段はリーズナブルといえます。相場は2万円〜7万円ほどで、既製品のスーツとほぼ変わらない値段で作ることができます。

イージーオーダー

「既製品のサイズに体型が合わない」「自分好みのデザインや生地を選びたい」という方は、イージーオーダーがおすすめです。一人ひとりの型紙は作らず、縫製工場が所有する型紙に修正を加えて自分のサイズに調整。マシンメイドで仕上げるため、手作業の多いフルオーダーよりも値段を抑えられます。相場は4万円〜20万円ほどです。

フルオーダー

フルオーダーは、細部にまでこだわりたい方におすすめです。フルオーダーは、一人ひとりの体型に合わせて型紙を作ります。本格的な仕立てに入る前に仮縫いを繰り返して微調整を行うため、サイズやデザインなどを細かく修正できます。体にフィットする理想的な一着を作ることができますが、職人による手作業が多く、時間も手間もかかります。オーダースーツでは最も値段が高く、相場は20万円〜100万円以上(上限なし)です。

オーダースーツの価格を左右するのは“生地の繊維の細さ”

オーダースーツの価格は生地の品質・価格に左右される部分が大きいですが、生地そのものの価値は基本的には生地に使われているウールの繊維の細さによって左右されます。

スーツ生地の主な原料はウールで、一般的には細くて長く、縮れ(クリンプ)があるウールほど価格が高いです。原毛が長いほど細くなる傾向にありますが、これらは生地製造に多くの毛を使う必要があります。また、細い繊維を丁寧に編み上げた生地は風合いが良く、手間がかかります。加えて、縮れがあるほど空気を多く含みます。夏は涼しく冬は温かい上質な生地になるため、価格は効果になりがちなのです。

なお、元のウールの太さは「Super〇〇’s」という単位で示されており、数字が10上がると元の毛は0.5μm(マイクロメートル※)細くなります。

例)Super70’s=20μm、Super80’s=19.5μm、Super90‘s=19μm

※1:以前は「μ(ミクロン)」という単位。現在は国際標準規格から「μm(マイクロメートル)」が使用されている。

オーダースーツにはどのような生地が使われているのか

オーダースーツに使用されている生地には、国内生地と輸入生地があります。

国内生地は関税や物流費などが抑えられているため、輸入生地と比較すると値段はリーズナブルです。流通している国内生地の約70%は、世界三代ウール繊維産地(※2)の1つとして知られる「尾州産(愛知県北西部)」です。品質は輸入生地と遜色なく、繊維の密度が高いことから耐久性に優れています。

この他、国内生地には御幸毛織(みゆきけおり)などの伝統と格式のある高級ブランドがあり、同品質の輸入生地と比べると良心的な値段なので人気があります。

一方、輸入生地は品質が高くデザイン性に優れています。例えば、イタリア・ビエラ地区で製造された生地は、やわらかくて発色がきれいです。デザインも多岐にわたるため、おしゃれに敏感な方に好まれます。また、イギリス・ハダースフィールド地方で製造された生地はしっかりとハリがあり、丈夫です。イギリスの伝統を感じられるデザインも魅力で、さらに防寒効果もあるため実用的といえます。

ただし、輸入生地は関税や送料、ロイヤリティー料などの関係から値段が高くなる傾向にあります。加えて、輸入生地の中には国内生地に少ない希少な素材(カシミア・シルク・リネン・キッドモヘアなど)の混率もあるので、高級品になりやすいです。

※2:尾州(日本)、ビエラ地区(イタリア)、ハダースフィールド(イギリス)

有名な生地ブランド・メーカー

こちらでは、イタリア・イギリス・日本の生地ブランド・メーカーを表でご紹介します。

イタリアの生地

生地ブランド・
メーカー名
特徴
Loro Piana/
ロロ・ピアーナ
原材料にこだわり抜いた高品質な生地を作る、イタリアを代表する生地メーカーです。紡績までを自社で一貫して行っています。やわらかくてふんわりした生地が特徴的で、カシミアの生産でも有名です。
Ermenegildo Zegna/
エルメネジルド・ゼニア
有名ファッションブランド御用達の世界最高峰のイタリア生地のブランドです。原毛の買付・素材開発・紡績などを一貫して行っています。
CARLO BARBERA/カルロ・バルベラ独自の製造により、ふっくらとした肌触りの生地を生産するブランド。発色や風合いが良い美しい生地は「羅紗の宝石(※3)」
CERRUTI/
チェルッティ
海外では有名なイタリアの老舗のブランド。最高品質の原毛を使い、紡績や仕上げも一貫生産しています。独特の光沢がある生地が特徴です。
CANONICO/
カノニコ
ビエラ地方にある世界に名だたる生地メーカー。流行に左右されないデザインと、軽くてなめらかな生地感が魅力です。リーズナブルなことからも人気があります。
REDA/レダ時代に適した先進的な生地を開発する世界三大生地メーカーの一つ。機能性・耐久性のある生地を多く取り扱っており、こちらもリーズナブルな価格帯が魅力です。
MARZOTTO/
マルゾット
上質なウールや毛織製品などを製造販売している老舗のブランドです。豊富なデザインの生地を扱っており、トレンドを取り入れた生地を多く展開しています。
DRAGO/ドラゴSuper130’s以上の糸の製造販売、また世界で最も細いSuper210’sの生地を開発・生産していることでも有名な紡績メーカーです。やわらかくて適度なハリ感がある機能性生地も豊富に扱っており、デザイン性と実用性のバランスが秀逸です。

※3:らしゃのほうせき。羅紗はポルトガル語で「厚手の毛織物」という意味。

イギリスの生地

生地ブランド・メーカー名特徴
Taylor & Lodge/
テイラー&ロッヂ
イギリスを代表する老舗の高級生地ブランドです。伝統的な製法により、手間と時間をかけて作られた生地は高い品質を誇ります。少量生産という点も魅力を後押しする要因です。
DORMEUIL/
ドーメル
イギリスの技術力とフランスのデザイン性を併せ持つ老舗ブランドです。フラッグシップである「アマデウス」は、クラシカルなデザインでしっかりとした生地感があります。
SCABAL/
スキャバル
上品で高品質の生地から、リーズナブルな価格帯の生地まで多く取り扱っている世界屈指の生地ブランドです。丈夫でハリがあり、美しいドレープが魅力の生地は、米国の歴代大統領や著名人なども虜にしたほど。機能性に優れた生地は、高温多湿な日本でも重宝します。
FOX BROTHERS/
フォックスブラザーズ
ウールを起毛加工したフランネル素材に定評がある生地ブランドです。伝統的なデザインと光沢、新鮮な色使いからスーツ愛好家に人気が高く、近年のクラシカル回帰の影響から注目されています。
Harrisons of Edinburgh/
ハリソンズ オブ エジンバラ
イギリスらしい、しっかりとしたハリコシのある生地が特徴的な生地ブランドです。最上級の原毛で作られる生地は、美しくなめらかな質感とエレガントで気品ある風合いをしており、世界中の紳士を魅了しています。
BOWER ROEBUCK/
バウワーローバック
伝統的なデザインの多いイギリス生地の中でも、モダンテイストのものを多く展開している生地ブランドです。ウールとカシミアの混紡生地は質が高く、海外でも高い評価を受けています。
JOHN FOSTER/ジョンフォスターイタリア生地のようなやわらかな質感を持つ生地を展開しているブランドです。軽くてハリコシがあり、耐久性にも優れています。良心的な価格帯なので、イギリス生地とイタリア生地の両方の良さを味わいたい方におすすめです。
MOON/ムーン伝統的なツイード生地を中心に展開する歴史ある生地ブランドです。発色が良く、しっかりとした風合いが目を引く生地は、染色や紡績、仕上げまでを一貫して行い作られています。ファッション性に富んだ織柄と色使いから、世界中で人気があります。

日本の生地

生地ブランド・メーカー名特徴
御幸毛織国産生地の中でも圧倒的な知名度を誇る生地メーカーです。イタリア生地のような風合いが魅力で、光沢のある上品な生地感が特徴です。
The KUNISHIMA 1850国島は尾州にある老舗の毛織物メーカーです。高密度で厚みがあり、手触りの良い生地を開発・製造しています。企業の顔であるThe KUNISHIMA 1850は、通常のウール生地よりも糸数が多く、しなやかでハリ感があります。
葛利毛織/くずりけおり明治時代中期に創業した老舗の毛織物メーカー。国内で唯一、手織りのような風合いになるションヘル織機を使い、しわのできにくい高品質なウール生地を作っています。
ダイドーリミテッド原材料にこだわり、インポート生地にも負けない生地を作る歴史ある生地メーカーです。国産生地メーカーで唯一、海外に自社牧場を持ち、製造販売を一貫して行っています。高温多湿に対応できる通気性の良い生地を開発しており、世界でも注目されています。

仕立て方や生地以外でオーダースーツの価格を左右する要素とは

オーダースーツは、付属(芯やパット、ボタンや裏地など)や、縫製した国によっても価格が変わります。

既製品のスーツに多いプラスチック製のボタンは安価ですが、貝や水牛の角などを使ったボタンは高級品です。また、裏地に関しても着心地を考えるなら上質な生地を選択することになるでしょう。付属の品質にこだわり、妥協しないスーツを作ろうとすれば、価格は高くなります。 中国や東南アジアなどで縫製されたスーツは、人件費を安く抑えて大量生産・低価格を実現しているケースが多いです。しかし、品質基準が高く大量生産に向かない国内生産のスーツは価格が高くなりがちです。

スーツの専門店と百貨店で仕立てる際の価格を比較

オーダースーツの値段は、オーダーを依頼する店舗によって変わります。こちらでは、スーツ専門店と百貨店の2つのケースについてご紹介します。

スーツの専門店の場合

テーラーのような専門店の場合、スーツに詳しい店員によるアドバイスを受けられます。自身のこだわりをはっきりと反映できますが、店舗によって値段には差があります。ホームページを確認したり、直接問い合わせたりして、おおよその値段を把握しておくと安心です。 なお、オーダーの際は予算に応じて相談や交渉などを行うのも良いでしょう。

百貨店の場合

百貨店はテーラーよりも利用しやすく、リーズナブルなものから高級なものまで幅広く取り扱っています。さまざまなブランドのスーツがあるので、その中から自分の好みに合ったものを選ぶことが可能です。ただし、店舗によって生地などの取り扱いや技量に差があるケースもあります。初めてオーダースーツを作るという方には、百貨店よりも専門店のほうがおすすめといえるかもしれません。

スーツの専門店は「チェーン店」と「テーラー」の2種類

スーツの専門店は、主にオーダースーツ専門のチェーン店とテーラーに分けられます。それぞれの特徴は下記のとおりです。

オーダースーツの専門チェーン店

オーダースーツの専門チェーン店は、アパレル企業や縫製工場、生地問屋などが経営母体であるケースが多く、基本的に都市部に立地しています。主にパターンオーダーやイージーオーダーを中心に取り扱っており、ほど良いフィット感とトレンド性から人気があります。価格帯は手ごろで、オーダースーツ初心者にもおすすめです。

テーラー

テーラーは、かつては紳士服の主流であった“ビスポーク”というフルオーダー主体の店舗です。企業として経営しているケースもありますが、大半は個人経営で成り立っています。顧客の要望に対応できるよう高級な素材も多く揃えており、素材の仕入れも店主の目にかなった希少なものを僅かに仕入れるので割高になりがちです。ただ、近年は良心的な価格帯で作れるイージーオーダーを扱う店舗も増えています。

オーダースーツのオプションについて知っておくべきこと

オーダースーツの値段が高くなる要因として、オプション選びが挙げられます。仮に同じ生地で、同じ形のスーツを仕立てたとしても、オプション次第で値段は大きく変わります。 自分に必要なものかどうかを見極めるためにも、オプションを選ぶ際は着用したときの見栄えと機能性について考えてみましょう。

オプションの一例・ボタン ・本切羽(袖口にあるボタンの開閉部分)、名入れ
・AMFステッチ(襟部分のステッチ) ・チェンジポケット
・アジャスター ・滑り止め(ウエスト部分)・シック(股部分の補強)
・お台場仕立て(ジャケットの内ポケットの周りの仕立て) など

ボタンや本切羽(ほんせっぱ)、AMFステッチなどは見栄えに大きく関わります。ボタンやステッチ一つでスーツの印象は変わるため、スーツを着用するシーンに合わせて好適なものを選ぶことが大切です。

また、アジャスターや滑り止め、お台場仕立ては機能性に大きく関わります。例えば、既製品のジャケットの内側は、裏地が下まで真っ直ぐになった通常仕立て(お台場仕立てなし)がほとんどですが、オーダースーツの場合は型崩れしにくいお台場仕立て(角台場・本台場)を選ぶことが可能です。

オプションの値段は、何を選ぶのか、どの店舗を利用するのかによって大きく変わります。そのため、オプションを選ぶ際は金額を確認し、予算範囲に収まるよう検討しましょう。

オーダースーツの予算を決めるポイント

オーダースーツを注文する際は、実際に捻出できる金額よりも予算を低く見積もっておくと良いでしょう。仮にオプションなどで値段が多少上がっても、支払いに不安がなく安心です。

初めてスーツを購入する場合は、4万円ほどの予算で良いでしょう。選べる生地のグレードやカスタマイズできる部分が限定されることもありますが、着心地が良くて体にフィットするスーツをオーダーすることは可能です。

ふだんのスーツよりも少しだけ良いスーツがほしいという方は、5〜7万円程度の予算を設定しておくと良いです。国産生地でリーズナブルに品質を保ちつつ、オプションによるカスタマイズで華やかに仕立てることもできます。襟やポケット、裏地といった細かい部分のオプションも選べますし、ある程度の予算を講じることで、ふだんとは違う特別な一着を作ったという満足感も得られます。 高級生地でこだわり抜いた一着を作りたい、高級テーラーやブランドの付加価値を得たいという方は、10万円以上の予算を設定しましょう。

細部にまで手の行き届いた好みの一着を作る場合、生地だけでなくオプションの値段も高くなることが予想できます。いざオーダーしたら予算範囲を超えてしまったとならないように、あらかじめ高めに予算を見積もって準備しておくことをおすすめします。

大まかに予算を決めたら店舗に足を運んでみよう

ある程度どれくらいの予算にするかが決まったら、一度店舗に足を運び、自分の決めた予算でどんなスーツが作れるのかを確認してみるのもおすすめです。予算の見直しにもなる他、これだけは譲れないというポイントを見つけるのにも役立ちます。

オーダースーツはサイズ感や着心地が良いため、一度作るとまた作りたくなると思う方が多い傾向にあります。昇進や転職、誕生日、還暦など何らかの節目にオーダースーツを作ろうと思い立つケースも珍しいことではないため、最初は低予算で、徐々に予算を上げていくと、オーダースーツの魅力を長く味わえるでしょう。

まとめ

リーズナブルな既製品のスーツは魅力的ですし、技術力の向上により出来栄えも素晴らしいものが多いです。新成人や新社会人、ふだんからあまりスーツを着ない方にとっては既製品のスーツでも充分満足できるでしょう。

しかし、オーダースーツは肩の位置や袖丈、着丈、腰回りなど細かなところまで配慮が行き届いていて高品質です。高いと思われがちのオーダースーツですが、値段はさまざま。場合によっては既製品を購入するよりもお得になることもあるため、スーツを新調する際はぜひオーダースーツを検討してみてください。

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