スーツに使われている芯地とは?芯地の役割や種類をご紹介
その他(豆知識)
2022.11.17
目次
スーツの表地や裏地のように外側から見える生地以外にも、表地と裏地の間に「芯地」という材料が使われていることをご存じでしょうか?
スーツにおける芯地とは何でどういった役割をしているのか、芯地にはどのような種類があるのかなどを詳しくご紹介いたします。
芯地は表からは見えないが重要な資材
芯地は裏地と表地の間に入っている資材で、表面からは見えませんがスーツの骨格とも言える重要な部分なのです。
スーツの骨格とも言える資材だけに芯地1つでスーツのシルエットも、耐久性も大きく変わります。
重要な部分ではあるものの表からは見えないこともあって軽視されやすく、低価格のスーツでは原価を抑えるために芯地の材質が落とされることも多いです。
芯地の材質を落とすことで1回洗濯したり濡れたりしただけでヨレヨレになり、高いお金を出して作ったスーツがすぐに台無しになってしまうかもしれません。
芯地の種類
芯地の種類は大きく分けてフラシ芯、接着芯の2種類に分けられます。
フラシ芯
「フラシ芯」は縫製すなわち生地同士を縫い合わせて仕立てられる衣服に使われる芯地で、スーツの芯地としてフラシ芯を使う場合には、馬の尾など動物の毛で作られた「毛芯」を使うのが一般的です。
接着芯
「接着芯」はプレス機やアイロンの熱によって生地をくっ付けて仕立てられる衣服に使われる芯地です。
縫製よりも熱でくっ付ける方が簡単で手間はかからないので、比較安価な既製スーツやオーダースーツでは接着芯が使われていることが多いです。
芯地はスーツにおいてどんな役割を果たしている?
スーツの形をきれいに保つ
スーツにおいて芯地が果たす役割は大きく分けて2つあり、1つは保形性すなわち「スーツの形を保つ」役割です。
どんなものでも「芯」がしっかりしていないと形が決まりませんが、スーツも芯地が入っていることでキレイなパリッとした形が保たれています。
芯地には一般的にハリやコシのある材質のものが使われているので、多少雨や汗で濡れてもスーツの形が崩れないようになっているのです。
縫製をしやすくする
これは芯地のうち接着芯を使用する場合の特性といえますが、スーツにおいて芯地が果たすもう1つの役割は「縫製をしやすくすること」です。
実際にスーツを触ってみると表地や裏地にはそれほどハリやコシのある素材は使われていないことが分かります。
裁縫の経験があると分かりますが、ハリやコシの無い素材を縫い合わせるのは難しく、単に縫い合わせるだけでなく形を保って縫い合わせるとなるとかなりの手間がかかってしまいます。
表地と裏地の間に接着芯を入れて張り合わせることで、縫製前に生地同志の歪みやずれが防止され縫いやすくなり、縫製にかかる手間を大きく軽減できるのです。
縫製にかかる手間はスーツの価格にも大きく関わってくるので、接着芯を使用することでコストを抑えることができます。
ただし、毛芯を縫い合わせる工程には手間がかかるため、毛芯を多く使用する品質の良いスーツは価格が高くなる傾向にあります。
芯地の使われる場所の違いは?
芯地はスーツ全体に使われているわけではなく、基本的にスーツの前側(胸側)に使われています。
胸からお腹にかけての「前身」、胸の襟を折り返した部分である「ラペル(下衿)」、首周りの「上衿補強芯」、肩回りの「肩芯」といった部分に芯地が入っているのです。
総毛芯
前身・ラペルなど全ての芯地に毛芯を使って仕立てたものは「総毛芯仕立て」とか「フル毛芯」「フルキャンバス」と言われます。
総毛芯仕立てだとスーツに立体感が生まれてシルエットが美しく、復元力も高いので型崩れしにくく長期間に渡って使用可能です。
半毛芯
前身の上半分と衿、肩回りに毛芯、前身の下半分には接着芯を使って仕立てたものを「半毛芯仕立て」「ハーフ毛芯」「ハーフキャンバス」と呼びます。
半毛芯にはコストを下げて価格を抑える目的もありますが、総毛芯に比べると軽くて通気性も良いので夏用スーツは半毛芯で仕立てるのが一般的です。
総接着芯
前身やラペルなど全ての芯地に接着芯を使って仕立てたものは「総接着芯仕立て」「フル接着」「ヒュージング」などと言われます。
縫製が必要な総毛芯や半毛芯に比べると仕立てに手間がかからないので、比較的安価な既製スーツは総接着芯で仕立てられていることが多いです。
家庭用洗濯機で水洗いできるウォッシャブルスーツも総接着芯仕立てとなっています。
毛芯仕立てのメリット
長持ちする
スーツを総毛芯もしくは半毛芯で仕立てるメリットとして「長持ちすること」が挙げられます。
接着芯の場合、着用による汗や湿気により、芯地と表地が剥離するとスーツの表面にデコボコやシワができて、良いスーツの見栄えが悪くなってしまいます。
総毛芯や半毛芯といった毛芯仕立てでは基本的に生地同士を縫い合わせているので、汗や湿気、洗濯などで芯地が剥離するといったことが無く、きれいな見た目のままでスーツを長く着用することができるというわけです。
芯地と表地が剥離しやすい安価なスーツを毎年買い替えることを考えると、長く着用できる毛芯仕立ての少し高価なオーダースーツの方が経済的でもあります。
綺麗なシルエット
毛芯仕立てのもう1つのメリットは「シルエットがキレイ」ということです。
芯地と表地を接着剤でくっ付けるとどうしてもペタッとなってしまいますが、縫製だと芯地と表地の間に僅かな隙間が生まれます。生地同士の僅かな隙間によって自然なカーブが描かれて、立体的でキレイなシルエットとなるわけです。
特に衿元が接着芯ではペタッと平面的になりますが、毛芯であればきれいなロールを保ちつつボリュームのある衿元となります。
毛芯仕立てのデメリット
値段が高くなる
毛芯仕立てのデメリットは何と言っても「スーツの価格が高くなること」です。
プレス機やアイロンで簡単に貼り付けられる接着芯に対して、毛芯は芯地と表地を縫い合わせて縫製されます。プレス機やアイロンで接着するのに比べると手間がかかりますし、高い縫製技術が必要となります。
ある程度の技術を持った職人が縫製をしますから、手間がかかるのでどうしても価格が高くなってしまうわけです。
ただ毛芯仕立てのスーツはメンテナンスさえしっかりしておけば10年15年と着続けることも可能です。短期間でヘタってしまう接着芯の安いスーツよりも10年15年着続けられる高価なオーダースーツの方が結果的には節約になる可能性があります。
重くなる
毛芯仕立てのデメリットとしてもう1つ「スーツ自体が重くなってしまうこと」が挙げられます。
毛芯は馬の尾など動物の毛で作られており、毛芯自体がそれなりの重さを持っているので毛芯仕立てのスーツは物理的に重くなってしまうのです。体に大きな負担がかかるほど重いわけではないものの、重厚感より軽さを求める方にとってはデメリットと感じられるかもしれません。
まとめ
オーダースーツの芯地や仕立てについて詳しく見てきました。
芯地は表からは見えないだけに軽視されがちですが、長くシルエットの整ったスーツを着用されたい方は毛芯のスーツを仕立ててみてはいかがでしょうか。HANABISHIでは本格的な総毛芯や半毛芯のスーツをオーダーできます。
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