スーツの袖ボタンの種類|適切な数と意味や由来について解説
その他(豆知識)
2023.1.6
目次
スーツのジャケットの袖にはボタンがついていますが、何のためについているのかご存じですか?
オーダースーツ専門店では、ヒアリング時にお客さまへ袖ボタンの数の希望をお伺いすることがあります。お客さまによって反応はさまざまですが、今まであまり気にしていなかったという方も中にはいらっしゃるようです。
スーツの袖ボタンはあるのが当たり前すぎて気にならないのかもしれませんが、スーツに袖ボタンがつけられた理由には所説あり、とくに2つの説が代表的なものとして伝わっています。
そこで今回は、スーツの袖ボタンの意味や2つの代表的な説、袖ボタンの正しい個数や種類(ボタンの並びや開閉の有無)、素材などについてご紹介します。ぜひ、ご覧ください。
スーツの袖にあるボタンの意味は?
結論からいうと、スーツの袖ボタンに機能的な意味はなく、装飾としての役割が大部分を占めています。しかし、最初から装飾の意味合いでつけられたわけではありません。所説ありますが、「袖で鼻水を拭かないため」「医師が袖まくりをできるようにするため」という2つの説が、袖ボタンの生まれたきっかけとして伝わっています。
「鼻水を拭かないため」という説には、ナポレオン・ボナパルトが関係しています。1812年、ナポレオンがロシア帝国に侵攻するため極寒の中を隊員とともに進んでいたところ、隊員たちは鼻水をジャケットの袖で拭いていたそうです。その結果、侵攻する際にはどの隊員の袖も鼻水でカピカピに。敵国を身なりから威圧することを重んじたナポレオンにとって、それは許し難い出来事でした。鼻水を拭かせないように、袖に金属のボタンをつけたことが、袖ボタンのはじまりといわれています。
もう一つは「医師がジャケットを羽織ったまま診察ができるように、袖まくりできるようにした」というものです。袖口を開き、そこを開閉できるように袖ボタンをつけたといわれています。
現代における袖ボタンの機能的な意味はほぼありませんが、理由があって生まれたものということを知るのは楽しいですよね。これまで袖ボタンを気にしたことがない方も、ぜひオーダースーツを仕立てる際は注目してみてくださいね。
スーツの袖にあるボタンの数は何個が正しい?
こちらでは、スーツの袖ボタンの数について解説します。
袖のボタンは3個か4個が基本
ジャケットの袖ボタンの数は、3個か4個が基本です。袖ボタンの数に悩んだら、どちらかのスーツを選ぶと良いでしょう。
そもそも袖ボタンの数は、イングランドなら4個、スコットランドなら3個というように「自分の出身地を表すもの」だったそうです。しかし、日本にそのような文化はないため、袖ボタンの数に正解はありません。1つでも2つでも5つでも、そもそも袖ボタンをつけなくてもマナー違反にはなりません。ただし、袖ボタンの数は他者へ与える印象を左右する重要なアイテムです。例えば、袖ボタンが1〜2個と少ないものはカジュアルな印象を与えるため、ビジネスシーンには不向きかもしれません。逆に4つ以上は重厚感や安心感、信頼感を演出するため、ここぞというときの商談などに向いているといえます。
袖ボタンをいくつつけるかによって相手が抱くイメージが変わるため、自分の好みはもちろん着用シーンに合わせて、適切な数を選んでみましょう。
袖にボタンがない場合もある
スーツの中には袖ボタンがないものもあり、女性用のスーツではよくみられる仕様です。他にも、購入後にボタン数や位置を決めるために、あえてボタンなしの状態で販売している店舗もあります。
袖ボタンがないジャケットは腕まくりをしやすく、暑い日や袖が汚れそうな作業をする際も気にせず着用できるため、カジュアルに着こなしを楽しめます。ビジネス向きというよりはプライベートで着用するジャケットにおすすめといえるでしょう。
スーツの袖ボタンの種類と素材
スーツの袖ボタンは、「ボタンの並び方(ボタン同士の間隔)」と「ボタンの開閉ができるかどうか」で、各2種類ずつに仕様が分かれています。
並びつけボタン
ボタン同士が重ならないように横一列に並べてつける仕様を「並びつけボタン」といいます。ボタンの並び方・つけ方で最も一般的で、既製品のスーツの多くは並びつけボタンです。目立った特徴はありませんが、だからこそどのようなシーンにもなじむ汎用性の高さが魅力といえます。
なお、弔事では並びつけボタンのスーツを着用するようにします。
重ねボタン
袖のボタンの一部が重なるように並んでいる仕様を「重ねボタン」または「キッスボタン」といいます。イタリアのスーツ職人が仕立て技術をアピールするために誕生したといわれており、実際にイタリアブランドのスーツの袖ボタンに多くみられる仕様です。
重ねボタンは装飾の意味合いが強く、手元を立体的で華やかに見せられます。冠婚葬祭のようなフォーマルな場での着用はおすすめできませんが、おしゃれな雰囲気から人気があります。
なお、重ねボタンのジャケットをずっと着用すると、ボタンの並びが乱れることがあります。袖側にあるボタンが一番上になるようにして、きれいに整えてください。
開き見せ
袖のボタンホールが開かず、あくまでも“フェイクデザイン”としてボタンホールの刺繍とボタンがついている仕様を「開き見せ(あきみせ)」といいます。中には、ボタンホールがない仕様のものもあります。
開き見せは既製品のスーツに多くみられる仕様です。刺繍をほどけば袖ボタンの位置を自由に移動させられるため、袖丈の調整がしやすいという利点があります。
本切羽
実際にボタンホールが開いており、ボタンの開閉ができる仕様を「本切羽(ほんせっぱ)」といいます。「袖本開き」とも呼ばれている他、医師が腕まくりをするためにできたことから「ドクターカフ」と呼ばれることもあります。
あえて第一ボタンを外して小粋さや抜け感を演出することはありますが、ボタンを開けて腕まくりをする方はおらず、あくまでも大人の遊び心やこだわりを表現するものとなっています。自分の体型に合ったスーツを仕立てられるオーダースーツだからこその仕様といえるでしょう。
なお、本切羽でも将来袖丈の調整をすることを考えて、上のボタンホールを開けずに刺繍にするケースもあります。
ボタンの素材
ボタンの素材はさまざまで、素材の持つ風合いによって印象が大きく変わります。
スーツの代表的なボタン素材は、下記の4つです。
- 水牛ボタン
- 貝ボタン
- ナットボタン
- ポリエステルボタン
水牛ボタンは高級感のある風合いが魅力で、丈夫で変色しづらく長持ちします。貝ボタンは割れやすいですが、光沢と気品があり、爽やかで涼しげな印象が魅力です。また、ナットボタンはナチュラルな風合いで落ち着きのある印象を与えますし、ポリエステルボタンは耐久性に優れており、ビジネススーツに多用されています。
これらの他にも、くるみボタンやメタルボタン、革ボタンなど、さまざまな素材があります。自分の好みはもちろん、生地との相性や季節感なども考えた上で、好適なボタン素材を選びましょう。
まとめ
スーツの袖ボタンは、オーダースーツを選択するならこだわるべきポイントといえます。袖ボタンの仕様によってスーツの印象は変わるため、自分の好みや着用シーンを踏まえた上で数や仕様を決めてください。「スーツに詳しくないし、そこまで細かいこだわりはない」という方は、フィッターなどに相談してみましょう。お話を聞いた上で、お客さまにぴったりの提案をしてもらえるはずです。
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